最近読書習慣が少しずつ復活してきたので、ちゃんと感想もブログに残していきたいところだけど、それがなかなか…。
思ったことをちゃんと文字化するのってむずかしい。
というわけで、つたないながらに感想を書いてみる。
今回読んだのは『BUTTERバター』という柚木麻子さんの作品だ。柚木さんのことは全く知らなかったのだけど、たまたま続けて彼女を目にする機会(ラジオとテレビ)があって興味を持ち、作品を初めて読んでみた。
この作品は「首都圏連続不審死事件」(木嶋佳苗の事件といったほうが分かりやすいかな?)を基にした小説で、主人公は木嶋(作中では梶井真奈子)の事件を追っている週刊誌の記者、町田里佳。
実際の事件をベースにしているとは言っても内容は完全なフィクション。
以下、かなりざっくりとしたあらすじ。
梶井は婚活サイトで知り合った男性から金品を巻き上げ、最終的には3人を殺した罪で拘置所に拘留中の身。そこへ記者である里佳が会いに行く。梶井は大変な美食家で逮捕されるまで書いていたグルメブログも事件をきっかけに話題となった。
梶井は幼いころ近くに酪農場があった影響から乳製品、特にバターにはこだわりがあり、美味しいバターを食べるように里佳にも言う。
タイトルにもなっているバターは作品の中ではとても象徴的な存在で、バターを中心とした食を介して、里佳は梶井の人となりや事件の全貌に迫っていく。
そういったなかで、親友の伶子や恋人である誠、家族との関係も変化していき、自分自身の人生にも梶井が大きな影響を与えていく。
と、すごくざっくり書くとこんな内容。500ページ超えの長編なので中途半端にいろいろ書くと、とんでもない分量になりそうなのでこのへんにしておく。
この梶井という女性が最初はモンスターのように描かれる。自信たっぷりで、食べることにどん欲。そのため体型もかなりふっくらしている。自分は本物が分かる人としか付き合いたくない、マーガリンを食べるような人間とは話もしたくないといった感じ。
しかし取材を進めていくうちに、自信家の一面だけでなく、彼女の劣等感や世の中への不満などが見えてくる。
そして次第に、梶井自身というよりも彼女の周りにいた人々、彼女の家族や知り合い、被害者の家族といった人たちへと話の軸は移っていく。
一つの事件があると、当然その事件に巻き込まれる人たちがたくさんいるわけで、この小説はむしろそういった人たちに焦点をあてて、その人たちがどんな思いで事件と向き合い、人生を歩んでいるのかを書いている。
そして事件に巻き込まれながらも自分の人生を必死で生きようとしている人たちへの温かい眼差しを感じる。
とにかくストーリーが面白い。長編は苦手なわたしでも割とスラスラ読めたので、お時間があったら是非。